お台場の科学未来館にて実施されたPlayStation VRのトークイベント「おしえて!PlayStation VR」に参加しましたのでざっくりレポートしようと思います。
『GAME ON』特別イベント「おしえて!PlayStation VR」
これは、開催されている科学未来館の企画展「GAME ON」の特別イベントとして、PlayStation VRの開発者である高橋泰生氏をお迎えして、VRについて語るというトークイベント。
企画展の「GAME ON」も楽しみつつ開発者のお話もうかがえる日、ということで、この日を狙っていざお台場へ。
土曜日とあって企画展「GAME ON」は大盛況でした。私はPlayStation VRの先行体験のために開館前に並んで予約券をゲットした後、企画展をじっくり回った後にイベントに参加しました。
企画展の方のレポートは改めて書こうと思います。
特別イベント「おしえて! PlayStation VR」の内容
出演は株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントのグローバル商品企画部の高橋泰生氏。
PlayStation VRの開発初期段階からメンバーとして参加されている方とのことで、バーチャルリアリティのキホンから、PlayStation VRのスペック、こだわりなどについて丁寧に語っていらっしゃいました。
イベントは「中学生でもわかる!VRってどんなもの?」「つくった人がPlayStaiton VRを徹底解説!」「質問コーナー:つくった人に聞いてみよう!」の3部構成となっていました。
以下はトークイベントで聞いた内容をざっくりかみ砕いてまとめています。以下のお話は高橋氏の発言そのものではなく、聞いた内容から私がまとめた見解である点にご注意ください。できるだけ本意を損なわないように取りまとめていますが、正式な取材ではなく記憶の範囲なのでギャップがあったらすみません。
中学生でもわかる!VRってどんなもの?
PlayStation VRにおける「バーチャルリアリティ」について。
PlayStationではテレビという平面でゲームをしていましたが、そのテレビの中に入ってそこにいるという感覚を持って体験できるものがバーチャルリアリティです。
このバーチャルリアリティ実現するために重要なものはプレゼンス (Sense of Presence)と呼ばれるもの。
「プレゼンス」というのは、没入感を超えて別の世界に自分が存在することを信じてしまう感覚。
しかしこのプレゼンスはとても壊れやすいもの。ちょっとした現実とのずれが違和感となってしまい、プレゼンスが壊され現実に引き戻されてしまいます。
プレゼンスを得るための要素は以下の6つ。
- 視覚・・・立体的に見せること、視野を広くカバーすること
- 聴覚・・・その場所から音が聞こえること
- トラッキング・・・頭や体の動きに合わせて、映像が追従すること
- コントロール・・・ユーザーがその世界に働きかけることができること
- 使いやすさ
- コンテンツ
つくった人がPlayStaiton VRを徹底解説!
解像度のスペックに書かれている「1920 x RGB x 1080」の「RGB」について。
ディスプレイは、色を出すために赤と緑と青の光の3原色で構成されています。
本来であればこれは、画素数が1920 x 1080ピクセルあるという意味ですが、小さいディスプレイパネルの場合、製品によっては一部の画素を間引いているものがあります。
PlayStation VRが使用しているディスプレイパネルは、この1920 x 1080ピクセルすべてにRGBの画素があります。これを正式にスペックとして書き表すために「1920 x RGB x 1080」という表記となっています。
これはPlayStation VRのこだわり。
スマホなどの小さい画面を見ただけでは気づきにくいものかもしれませんが、光学レンズを使って視野全体に映像を広げるPlayStation VRではこのディスプレイパネルでより高精細な映像が楽しめるようになっています。
90hz、120hzのリフレッシュレート
バーチャルリアリティの「プレゼンス」には、画面の表示速度というものが非常に重要です。
頭を動かしてから映像が遅れてついてくるようではお話になりません。
PlayStation VRでは120hzという高速のディスプレイパネルを使用しています。
この解像度とインチサイズで120hzで動作するディスプレイパネルは他のVRデバイスの中でも初めてとのこと。
光学レンズ
光学レンズは1枚で構成されているとのこと(1群1枚)。1枚構成にしたのは重量増加を避けるためだそうです。
シンプルな光学レンズで視野角を広げるために単純な球面ではなく、中央を解像度を高く、周辺部分は意図的にぼやけるような見栄えになっているとのこと。
こだわりのデザイン
重心が前に行くと不快感を感じる。全体のバランスをとるために、後ろに重りを入れているそうです。これは何かの機器などではなく本当に単純な重り。
重りを入れることによって、重りを入れない場合よりも重さが感じにくくなっているようです。
実際に高橋氏がヘッドセットの頭頂部のあたりを人差し指で指で引っ掛けて持ち上げて見せていましたが、釣り合いの取れた天秤のように、きれいにバランスが取れていました。
プロセッサーユニットの主な機能
プロセッサユニットが行っている処理は、「3D オーディオプロセッシング」「ソーシャルスクリーン」「シネマティックモード」だそうです。
ソーシャルスクリーンは、ゲームを多人数で楽しむために「テレビ用の映像」、「VRヘッドセット用の映像」の2種類の映像を作り出すために使われる機能で、ゲームによってはヘッドセットの映像とは全く別の映像を作る必要があるため、こういったプロセッサユニットが必要とされているようです。
質問コーナー:作った人に聞いてみよう
Q. 最低限必要な広さは? 移動が必要がゲームなどが今後でてくるの?
A. 正確な頭のトラッキングが重要で、カメラに写っている範囲から外れてしまうとトラッキングできなくなってしまいます。プレイエリアと呼ばれるこの範囲は決められた大きさがあります。
PlayStaiton VRのプレイアリアは、カメラから3メートル以内、近すぎてもダメ。横は1.9メートルの範囲がトラッキング可能です。それから超えてしまうとプレエリアから外れているメッセージが表示されるようになっています。また、PlayStation VRは座って遊ぶのが基本ですが、ゲームタイトルによっては立ってプレイすることも可能となるようです。
Q. VRは今後どれくらいまで進化しますか?コンタクトレンズくらいになりますか?
A. 今のVR機器もこのサイズにしたくてなっているわけではなく、今の技術ではこのサイズじゃないとVR体験ができないためにこの大きさになっています。技術的には見えていないけど時間の問題。何年かかるかはともかく、最終的には進化するのではないでしょうか。
VRの技術開発のスピードもこれから加速されるかもしれないので、もしかするとあっという間かもしれないですね。
Q. 光をトラッキングしているけど、他社はそんなに光ってない。光である理由は?
トラッキングの手法はいろいろありますが、PlayStation Cameraは通常のカメラを使ってトラッキングしています。
そのほかにはIR(赤外線)を使うものがありますが、それぞれ善し悪しがあります。
PlayStation Cameraの場合、色の違いも分かるので、PlayStation Moveのコントローラーは色を変えるだけで複数のコントローラーをトラッキングできるようになっています。
IRの場合は色がないので、パターンを変えないと違うものをトラッキングすることができません。
PlayStation VRではPlayStation Moveで培った技術があったため、このトラッキング方法を採用しています。
ちなみに、イベント内で高橋氏がPlayStation VRの開発の歴史を説明されていましたが、試作機のヘッドセットは、PlayStation Moveのスフィア(光球)がハリボテの枠組みにそのままくっついているような構造になっていました。
この光を使ったトラッキングはPlayStation 3の時代から長年積み上げられてきた技術なのですね。
最後に
今後、現実世界と仮想世界は近づくのか、離れていくのかという問いに対して、高橋氏は「より身近になり新しい体験が広がっていく。バーチャルという言葉すら消えていき、生活の一部として取り込まれ、それが当たり目の世界になるのでは。」と締めくくっていました。
今回のイベントや企画展の先行体験をしてみて、PlayStation VRは他のVRデバイスにはない「家庭で楽しめるVR」であることを強く感じられる作りになっていると感じました。
今後の展開が楽しみです。